12  池辺慎一郎

今、美術を選んで良かったと思っています。初めの頃は美術を選んで失敗したと思っていました。美術を選んだ理由が特にあるわけでもなく、なんとなく決めました。美術の時間の話は正直しんどかったし、絵を描くことも憂鬱でした。それでも、先生の話を聞き流せなかったのは自分でも少し思うところがあったからだと思います。
油絵を通して、自画像というのは個性が出ているということが良く分かりました。色使いや筆遣いまで、何十時間もやっていると、一人一人違うということが分かりました。自分で絵を描いていても周りの人とずいぶん違っているように感じていて、何とか同じになるようにしていました。でも、それは他の人たちも同じことで一人一人違っているからおもしろく、いい作品ができるのだということです。当たり前のことだと思っていても案外自分じゃ理解していなかったのかもしれません。
そして、自画像を描くことは苦痛でした。鏡で自分を見ることも嫌だったし、それを通して自分そのものを見ることも、自分を絵として表現することも嫌いでした。そもそも、自分がどんな人間かも分からずに表現しようとしていたからこそ苦痛だったんだと思います。
先生には何度も目が死んでいると指摘されました。今でも目はいまいちのままです。鏡に映っている自分の目も生きているといえるのか疑問です。目は自分そのものについての本質を表しているようで、でも、どう手をつけたらいいのか分からないままでした。結局30時間以上もやっていてほとんど自分が分からないまま終わってしまいそうです。ただ、自分について分かったことがひとつあります。誰にでも言えることかもしれませんが、楽しんで絵を描くほうがうまくいくということです。あんまりグチグチ考えたり、憂鬱にかいているとうまくいきません。これからは何をするにせよ楽しんでやっていきたいと思います。