22 町田奈津実

私は今まで自画像を描くということにあまり魅力を感じていませんでした。小中学校の授業で何度か描いたことはありましたが、モチーフを自己選択出来ないことや、うまく自分に似せられないもどかしさがあり、楽しんで描くことはなかなか出来ませんでした。「自画像はあまり楽しくない。」そんな先入観があったからか、私の自画像のスタートは散々なものでした。無難に肌は肌色、髪は茶系の色、ワイシャツとセーターもそのままの色で…。そんな風に個性も何も無い色を使って毎時間毎時間絵の具を重ねていきましたが、私の絵は成長する気配を一向に見せませんでした。授業中、周りをちょっと見渡してみると独特の色やタッチを使った、綺麗で、迫力があって、面白い絵がたくさんありました。わぁ…と、感心した後自分のキャンバスに視線を戻すとそこにあるのはつまらない絵でした。皆の絵を見て感じた「綺麗」も「迫力」も「面白み」も何も見られない、つまらない絵でした。私は焦りを感じました。全身がムズムズするような焦りでした。「こんなつまらない絵は嫌だ。前進したい!」と心の中で叫び始めました。
 他人を羨んでも、切望してもこの焦りは解消できるはずもないので、まず肌をもっと鮮やかな色で塗りたいと考え、まず赤と青で色を付けることにしました。すると、自分を今まで縛っていた物がスルッと解けた気がしました。これからは自由に、本当に楽しんでこの絵を描ける、と思いました。それからは、こうしてみたい!と思ったらすぐに実行に移せるようになりました。髪の毛も綺麗な虹のような色にしてみよう、自分の好きな表現である丸を取り入れてみよう、背景を赤と青を使って陰陽のマークのようにしてみよう…。私の絵は一時間毎に異なった表情を見せるようになりました。
その中には自分が気に入ったものも、失敗だと思ったものもありました。しかし、たとえ失敗しても、あとでやり直すことは出来ます。「ここを失敗してしまった!もう終わりだ!」なんて事態は存在しないのです。なるほど、このようなところは絵を描くことと生きていくことの共通点だと、先生が仰っていたことがようやく納得できました。また、以前より絵に没頭出来るようになったことも確かです。楽しんで描けるようになったので少しは面白みのある絵にすることが出来たのではないかと思います。
 さて、最終的に私の自画像の出来は最高…という訳にはいきませんでした。まだまだ改善の余地がいくつもあるので、描こうと思えばあと何十時間でもこの絵に費やせそうです。今回の課題では三十時間もの長い時間をかけて絵を描くという貴重な体験ができ、さらに絵だけに止まらず人生において大切なことも学べて、本当にこの絵に取り組んで得たものは多かったと思いました。私は自画像を描くことで学んだ、勇気を持って「一歩」を踏み出すことをこれからの人生で役立てていけるよう努力したいと思います。私は決断力に欠けていたり、人見知りだったりと勇気の足りないところがあります。そんな情けない自分がひょっこり顔を出してしまったときに、美術の時間に出した勇気を思い出して、また小さな一歩を踏み出したいと思っています。そして小さな一歩を重ね、人間的に成長していきたいです。