24 國安孝具

最初の美術の授業では「なんだかなあ」というのが僕の正直な感想でした。そもそも、僕の今までの学校生活の中で人生の様々なことについて語ってくれたのは先生が始めてでした。最初、毎回授業に行くのが憂鬱でした。けれど、先生の言うように絵を直してみると、自分の絵の魅力が増していくことに気づきはじめました。また、周りを見渡してみると、全体的に素敵な絵が増えていくのを感ました。美術室に向かう気持ちが変わり始めたのはその頃です。
 自画像に向き合っている長い間、先生のお話に耳を傾けている時間も貴重なものでした。先生のおっしゃっていた通り、僕たちの多くは温室のような環境で過ごしてきたのではないかと思います。そんな僕たちにとって、先生のお話は衝撃的であると同時に新鮮なものでした。それは僕たちの一つの道標になったように感じました。
自分に正面から向き合わなければならない自画像。自分を配置する位置、色使い、背景、皆それぞれ他人とは違うものを持っていました。それは誰かに教わったものではありません。何かと、個性、個性と叫ばれがちな世の中ですが、そんなこと人に言われなくたって皆が持っていると自画像制作を通して感じました。しかし、僕たちにいかにして自分を見つめるのか、また、自分と向き合う大切さを教えてくれたのは先生でした。
もうすぐ、美術の授業も終わってしまいますが、先生に教えていただいたことを胸に、「一流」と呼ばれるような人間になれるよう、自分を見つめながら生きていきたいと思います。ありがとうございました。