26 増山 千尋
私は、半年間この自画像と向き合えて本当に良かったと思っています。なぜなら、私は他人と違うものを描きたいと思うあまり、ポーズにこだわってしまい肝心の顔に力が入りませんでした。雰囲気も出せず、背景もちぐはぐで自分の絵を見られるのが恥ずかしくて、美術の授業終わると急いでキャンバスを片付けていました。自分の絵がうまくいかないことがもどかしく、正直、美術室へ行くことが毎回憂鬱でした。小牧先生が自分の後ろを通られる度に 絵の悪いところを指導されるのが怖くてびくびくしていました。
しかし、そんなときです。先生が他の生徒におっしゃった言葉の中に次のようなものがありました。 「君は人と違うことをやっているのだからきっちりやりなさい。」 はっとしました。その生徒もいわゆる「人と違う」ポーズをかいていました。自分は人と違うことを意識するあまり 「自分らしさ」を忘れ、肝心な部分をないがしろにしてしまっていた、ということに気づかされました。それからは、つめが甘くならないよう、かつ自由に自分の描きたい色で描いていきました。すると絵は自然に深みを増していき、そのことが自分でもわかってきて 美術の時間が楽しみになりました。今では、キャンパスを急いでしまうこともなく、堂々とした気持ちでいることができます。しかし、これで満足してはいけません。小牧先生はこうもおっしゃいました。 「絵は完成ということはない。」自分は、途中なんども 「これでいいいや。」と思うことがありましたが、あれは、すべて妥協だったのだと思い知らされました。この自画像も未完成です。しかし わたしにとって満足のいく「未完成の自画像」となりました。半年間、自画像に成長させてもらうことができました。また、大人になってからも自画像は描いていきたいです。ありがとうございました。