33 西垣 美央
高校に入学して迷わず美術を選択した。もともと絵を描くのが好きだったからだ。高校では油絵をやれるということで、楽しみにしていた。
美術の時間では初めデッサンをやっていたが、その後すぐ油絵に移った。自画像を描くという話を聞いたときは、面白そうだなと思った。自画像なんて、今まで描いたことがなかった。描き始めて、青ざめた表情になってしまったことに気がついた。あまり暗い表情にするのもなぁと思って、少し笑わせようかと考えたがすぐやめた。私は小学生の頃からよく「調子が悪いの?」と尋ねられた。別にどこも悪くないが、学校にいると顔色が悪く見えるらしい。しかしそれが事実なら、それをありのままに描こうと思った。無理に笑わせるのはありのままではないし、不自然だろう。暗く見えてもいいから、現在の自分の姿を描くのがいいと思った。
先生からのアドバイスもあり、出来上がった絵は最初と比べるとだいぶよくなったと思う。しかし、何となくしっくりこない絵だし、気に入らないとも思ってしまう。妙に技術的なものにこだわってしまった。純粋に芸術という観点から見て、この絵はつまらないような気がする。自分はまだまだ未熟だと思った。
一年間、翼工房で学んだ時間はとても充実していた。勉強の間に入る美術の時間は楽しかった。時折どうしたらいいのかわからず手が止まってしまったが、先生がいいアドバイスをくださったし、油絵は色々な方法を試せる画材だったので、再び描き始めることができた。また、美術に関してだけでなく、先生のお話からは、色々なことを考えさせられた。芸術について理解を深めるとともに、精神的な成長が得られた一年だったと思う。