38 本木麻衣子
私は、別に小さいころから塾に通っていたわけでもなく、いつも外で虫取りや木登りをしているような子供でした。一高生だからといって誰もが勉強ばかりをしてきたわけではないのだ、と先生の持つ一高生のイメージには、反感を持つこともありました。しかし、犯罪を犯したり、自殺をする生徒が多くいるのだと聞き、驚くと同時に、もしかしたら自分もいつか生きることにくじけてしまうのではないかと不安になりました。
授業中、先生はそんな不安定な私たちを根本からたたき直そうとしてくれました。十五歳を手遅れだと思う人も少なくないと思います。先生は、個人としての意見を持ち、私たち生徒に真っ向から挑んでくれる初めての先生でした。だから、時に予想外に、私の心を見透かしたような先生の話を真剣に聞こうと努めました。しかし、結局私はその話の数々を自画像に生かすことができませんでした。どんな話を聞いても、何度頭で考えても、筆は臆病なままで、色が少し変わっていくくらいの、見せかけだけで表面的な自己破壊しかできませんでした。
出来上がった自画像は、吸収し、考えることはできても実行には移せない私自身をよく現していると思いました。私は、本当に疲労はしない程度に努力し、頑張ったふりをするのが得意です。あと一歩、本気でやりきれることができれば「程々の努力」も「本当の努力」になると分かっているのに、中々踏み出せないでいます。
その一歩の踏み出し方、つまりは自己破壊の仕方が私はまだ良く分かりません。けれど、自画像を描きながら、真剣に悩み自分について深く考え直すことで、今まで気づきもしなかった自分の「壁」の存在を知ることができました。それはこれからの私につながる大きな進展だったと思います。ご指導ありがとうございました。