4  藤原由三佳

 自画像を描くということは、私にとって初めての体験であり、自分捜しの第一歩となった。
 私は今まで、人物の顔を描くのがとても苦手で、最初「自分の顔を描く」ということにとても抵抗があった。しかし、毎時間少しずつ絵の具を重ねていくうちに、絵を描くことが楽しくなって、自分自身の変化にとても驚いた。自画像として自分の姿を描き、自分の好きな色を自分らしくキャンバスの上に置くことで、ほかの教室の授業で緊張してしまっていた心の緊張をほぐし、新鮮で穏やかな気持ちで本当の自分と向き合うことができた。
 小・中学校での美術の授業は、いかにそのものに似せて描くかが重要で、何も考えずに描いていてもチヤホヤされるようなものだったので 私は今まで一度も美術の授業を楽しいと感じたことがなかった。そんな私が高校に入って、小牧先生の美術の授業を受け、絵を描くことの奥の深さを知り、それを通して少しずつ成長してゆく自分の姿に気づくことができた。絵の具を重ね、目を背けずに、「本当の自分」と向き合いながら、理想の自分を自分なりに追い求めることができた。
私は初めて授業で絵を描くことを楽しいと思った。生まれて初めての先生の厳しい言葉も、その時は落ち込む原因でしかなかったが、今振り返ると自分を変える大きなきっかけであったように思える。今まで私は、美術を含め、芸術とはその人の技術によって成るものだと思っていた。しかし自画像制作を通して、芸術には、技術というよりはむしろその人の個性や心、つまりその人そのものの要素が多く現れるのではないかと感じるようになった。
私は「芸術は面白いものだ」と、この翼工房で初めて実感することが出来た。また、「どうすれば私らしさがでるのだろう?」、「どうすればもっともっと良くなるのだろう?」と悩み、苦しんで、それでも先を目指しながら、私は「絵は人生そのものである」という意味を、何十時間という長い制作期間の中で学んだ。真の美しさとは何か、それを追求しながら自分の人間性を磨いていくことに喜びさえ覚えるようになった。
翼工房で過ごすことの出来る時間が残り少ないことがとても寂しい。翼工房で学んだことを活かしながら、一日一日を過ごして行きたいと思う。