40 富岡宏隆
僕は「自画像を描く」ということを通じて、「自分を見つめる」ことが非常に重くて辛く、単純なようで難しいということを知りました。ただ、実際に自分を見つめられたかというと、これは自信がありません。なぜならひとつのことが目に付くと、それに気をとられて全体がわからず、全体を見ようとするといろいろなところを間違ってしまうからです。それに今の自分が終止形ではなく、自分はこれからも変わっていかなければならないであろうからです。理由はそれだけにとどまりません。自分を見つめるということはとても深いことだと思いました。
自画像に取り組む前、わたしは自分の内も外も見ているつもりで、その実何も見ていませんでした。自画像を通じて自分を改めて見つめた時、いままでいかに自分が「見ているつもり」になっていたかが分かりました。しかし、自分を本当に見つめるということは、一朝一夕にできる事では有りません。「骨格を見ろ」とか「絵の具を使え」といった小牧先生のアドバイスも、頭では分かっていたのに実行できないことも多々あったと思います。
自画像というテーマは、油絵を習って間もない自分にとって大きなものでした。油絵は、その技術や表現方法、表現する自分そのものといった多くの点で、自分には新鮮な冒険だったように思います。でも、自分は英雄のように勇気があるわけではありませんから、新しい領域に踏み出せない時もありました。そんな時、これからは自画像の経験をもとに心を奮い立たせていきたいと思います。