43 小林祐介

二学期が始まった頃、僕は自画像を描き始めました。それは、三十時間もの時間を使って描く初めての絵であり、また生まれて始めて描く自画像でした。今まで僕は五時間以上の時間を絵に費やしたことはありませんでした。そのせいで十時間あれば終わるだろうというバカな考えをもっていました。
 自画像を描き始めると、塗り重ねて破れない麻に驚きました。何度重ねても破れないようなすばらしい素材を使っているのに僕は一度描いた絵にまた色を塗ることさえためらっていました。良い絵だったからではなく、一度描いた絵を塗り重ねるということは、一度描いた絵が駄目になってしまうのではないかと思ったからです。しかし、ためらってはいましたが、先生が「勇気を出せ。思い切ってやるしかない」などのたくさんの励ましの言葉をかけてくれていて、描き直してみようという気持ちになれました。
そして中学校の頃は美術の成績が3だった僕ですが、高校に来て自分が気に入った作品を作ることができました。うれしかったです。
 僕はこの自画像を通して、一度やったことをやり直すことは無駄なこと、悪いことではなく、それをさらに向上させること、良いことだと悟りました。これから僕は東京まで自転車で行った友人のように、勇気を持って、思い切った行動ができるような人間になっていきたいと思います。